きのねがいちばん大切にしたいこと
きのねを立ち上げ、もうすぐ2年が経とうとしています。
「発達の土台を整える」というコンセプトで、感覚統合をベースにした療育を行ってきましたが、この2年でたくさんの子ども達や保護者と関わる中で、また自身の娘と向き合うなかで、「きのねがいちばん大切にしたいこと」が明確になってきました。
「きのねがいちばん大切にしたいこと」それは、「その子のありのままを受け止めること」「子どもの自己肯定感を高めること」です。
以前の療育コラムでこんな事を書いていました。
『支援を必要としている方は、見え方、感じ方の違いなどから、私たちには想像できないような生きづらさを抱えている場合があります。
私たち支援者は、「できない事をできるようにする」という事を目標に支援するのではなく、彼らが抱えている生きづらさを理解し、「こうすれば生きやすくなるよ」「こんな力が付けばもっと可能性が広がるよ」ということに気付かせてあげたり、一緒に方法を考えたりして、彼らが安心して自分らしく生きられるよう支援していくことが大切ではないでしょうか。
彼らのありのままを受け止め、安心できる居場所を保障し、本来持っている力を引き出せるよう支援していくことが、私たち支援者の役割だと強く思います。』
この思いは今も全く変わっていません。
感覚機能がうまく働かなかったり、体を思うように動かせなかったり、感性が人と違うことで、集団に馴染めなかったり周りとトラブルが絶えず、怒られてばかりの子。
一見集団に馴染んでいるように見えるけど、必死に周りに合わせようとし、人間関係に悩み疲れきってしまっている子。
想像できないような生きづらさの中で、彼らは必死に頑張っています。
どんなに頑張ってもうまくいかず怒られたり、認められなかったりすることが続くと、「自分は何をやってもダメなんだ」と、自分を否定するようになってしまいます。
いろいろな事がうまくいかない原因は「自分」にあるのだと。
だから、きのねでは、たくさん頑張っているその子をいっぱい認めてあげて、「そのままでいいんだよ」と言ってあげたい。
脳や体の機能がうまく働かず、不具合を起しているところがあって、今は本来持っている力を出せていないだけ。
でも、あなたは、他の誰もできないこんなすごい事ができる!それはあなただけの宝物だよ。
だから、安心して自分を出していいんだよ、と。
きのねでは、「できない経験」をすることを最小限に抑えたいこともあり、「できないこと」をできない事で訓練はしません。無理に集団に入れようとすることもありません。
自由に、思いきり体を動かしてあそぶ中で感覚機能を整えていき、その子が抱えている「生きづらさ」を軽減しながら、本来持っている力を引き出していきます。
たくさんの「できた!」を積み重ねていくことで、自己肯定感を高めていくことをいちばんに考えて支援していきます。
私も人の親なので、「みんなと一緒のことができるようになるように」という親御さんの思いは分かります。
でも、いくら集団行動ができるようになっても、勉強が人並みにできるようになっても、「ありのままの自分を肯定する」という心の土台が育っていなければ、何かうまくいかなくなった時に、すぐに心は壊れてしまいます。
小学校低学年で学校へ行けなくなってしまう子もいます。小学校、中学校がうまくいっていても高校や大学でつまずいてしまうこともあるし、社会人になってからつまずいてしまうこともあります。
心の土台がしっかり育っていなければ、今まで無理やり積み重ねてきた物は一瞬で崩れ落ちてしまうのです。
それでも、「つらい時はつらいって言っていいこと、本当につらくなったらヘルプを出していいこと、失敗してもやり直せばいいこと」この力が育っていれば、人は何度でもやり直しがききます。
だから、きのねでは、安心して自分を出せる環境で、他者を信頼できる力を付けながら、何度でも挑戦できる機会を保障し、自己肯定感を高めていくことを大切に支援していきたいと思っています。
その子がその子らしく輝けるように。
「障害がある」という事は、その子自身に障害があるのではなく、周りの社会との間に「障害がある」ということなのです。
生きづらさを抱える子どもの心が壊れてしまうことがないように、自分自身の事を大切に思えるようになるように、社会の理解が進むことを切に願っています。
こども発達支援きのね
代表 福田 久乃